境界性パーソナリティ障害とは
2024.08.31
SNSではさまざまな性格や思考をもった人々が自由に自分の意見や考え、趣味嗜好を発信しています。新たな発見や有意義な情報を与えてくれる一方で、過激な投稿も見られます。例えば、特定の人物に付きまとって過度な誹謗中傷を繰り返す投稿、自分の「推し」を盲目に信仰し時間や金銭をいかにつぎ込んでいるかを誇示する投稿、自分自身を過度に卑下して体を傷つけたり死を連想させたりする投稿など…。見ていて胸が締め付けられるような投稿も少なくありません。
そういった投稿の中には、単なる自己表現や自己アピールといった意味合いだけでなく、生きにくい社会の中でもがきながら必死に生きている叫び声の様に聞こえるものがあります。他者を攻撃したり、誰かに依存したり、自分を傷つけないと生きていないと感じている人々の存在を、SNSの中に見ることができます。そのような振る舞いが顕著である人の中には、「境界性パーソナリティ障害」と呼ばれる障害を持つ人がいます。
「 パーソナリティ」とは、一般的には人の「個性」や「人格」を指す言葉ですが、心理学的には「個人の思考や行動、認知などに一貫した影響をもたらすもの」を指します。つまりパーソナリティ障害とは、単にその人の「性格が悪い」という状態を指しているのではなく、本人に著しい苦痛を与え、社会適応を困難にさせている思考や行動・認知などのパターンが長期的に持続している状態を指します。
精神疾患の診断基準であるDSM-5では、10のパーソナリティ障害を示しており、その中の一つが「境界性パーソナリティ障害」です。
<境界性パーソナリティ障害の特徴>
境界性パーソナリティ障害では、主に「対人関係」「自己像」「感情コントロール」の3つの側面で著しい偏りがあるとされています。
- 「見捨てられるかもしれない」という不安に対して、「見捨てられたくない」という気持ちからなりふり構わない努力をする。
- 相手を「理想化」したかと思えば一転して「こき下ろし」、対人関係が安定しない。
- 「自分とは何ものか」がわからなくなったり、揺らいだりする。
- 過度な浪費,性行為,物質乱用,無謀な運転,過食など自分を傷つける行動をとる。
- 死の観念に囚われ、実行しようとする。または自傷行為を繰り返す。
- 数時間程度でころころ変わる不快感、いらだち、不安など。
- 慢性的な空虚感。
- 制御や予測が難しいかんしゃくや怒り、暴力的な行動。
- 強いストレスを感じたときに、非現実的で妄想的な思考や記憶の混乱などの解離症状が起こる。
境界性パーソナリティ障害は、ボーダーパーソナリティ障害ともいわれ、単に「ボーダー」と略されることもあります。「境界性(ボーダー)」とは、神経症と統合失調症の境目にあるような病態であることを意味しています。イライラや不安などの気分の変調は誰にでも起こりうる神経症圏の症状ですが、それが妄想的で被害的な統合失調症圏の症状にまで発展することがあります。また、病気の様に一時的なものではなく、青年期ごろからずっと継続しています。そのため、まるでその人の「性格」かのように本人も周囲も認識しているでしょう。しかし、その根底にはこれまで経験したトラウマ的な体験、家庭環境、遺伝的要因、社会的要因など、いくつもの複雑な要因が絡んでいることがあります。
生きづらさを感じたとき、自分の性格のせいだと落ち込む前に、誰かに相談してみてはいかがでしょうか?「こころの保健室」では、こころの専門家があなたのお悩みに寄り添います。