境界性パーソナリティ障害の原因と治療
2024.09.10
境界性パーソナリティ障害が発症する原因に明確なものはなく、家庭環境や生活習慣、社会的要因、生まれ持った気質、遺伝的要因などいくつかの要因が重なっていると思われます。しかしながら、成長の過程で自分自身の良いところを見つけられなかったり、自分自身を大切する経験が少なかったりしたことが一つの共通する要因として考えられるかもしれません。
例えば、家庭の中で特定の人物が“台風の目”のような存在であったとき、他の家族メンバーはその人物を中心に振り回されるような生活を送ることになります。特定の人物が癇癪もちであった場合、いかに癇癪を起させないように生活するか、自分のことよりもその人物を優先して考えてしまうでしょう。どれだけ努力しても工夫しても、褒められることはなく、罵倒されるようなことばかりが増えていったとしたら、自分の良さを見つけることはとても難しいことです。
また、自分らしさや趣味を見つける余裕すらない生活環境だと、自分の心身を守る手段を得る機会も少なくなります。そのため、ストレスフルな状況に陥った時、自傷や依存行動など、未熟なストレス回避行動を選択しがちになります。
<認知行動療法の有効性>
認知行動療法では、偏った認知によっておこる問題を修正し、より適切な行動へと導く心理療法です。境界性パーソナリティ障害では、非常に主観的な立場で物事を認知するため、客観的な視点で物事を理解することが難しく感じられます。認知行動療法を用いることで、ストレス状況に対する客観的な理解、その場面における適切な対処行動などについてカウンセラーと一緒に考えていきます。
また、感情コントロールや対人関係の健全な構築の仕方についても認知行動療法の中で取り扱っていきます。
境界性パーソナリティ障害は治療が難しいといわれています。その理由の一つが、治療者(カウンセラー)―患者(相談者)関係の不安定さです。症状の中核に対人関係の問題があるため、治療者(カウンセラー)との関係性の構築も容易ではなく、不安定なものになりがちです。治療者を“理想化”し、救世主の様に頼っていたかと思えば、何かのきっかけで“こき下ろし”が始まり、治療継続が困難になることもあります。しかしながら、このような現象が起きることは関係性が深まっているからこそでもあります。なぜこのような気持ちになるのか、お互いの気持ちを打ち明け、考えてみることも、治療の一つの過程であるといえるでしょう。
「こころの保健室」では、自分自身について考える手助けをしています。一人で悩まず、ぜひ相談してみてください。