機能不全家族と心の回復
2024.06.02
機能不全家族の中で生きてきた子どもたちは、大人になった時にさまざまな生きづらさや困難に遭遇します。そしてその状況を「自分のせいだ」「自分ができないからだ」と思い込み、一人で苦しみを抱え込んでしまいがちです。しかし、この生きづらさは能力不足などで生じているわけではなく、生きづらさを生じさせる負のループに迷い込んでいることが一つの要因です。まずそれを知ることが、心の回復への第一歩となります。
【家族の中で自分が置かれている状況を知る】
子どものころの自分を思い出した時、「もっと自分がやれていれば」と思うこともあったかもしれません。しかし、本来親や周囲の大人が担うべき役割を子どもが担っていたとしたら、その役割を子どもがうまくこなせるはずがありません。強くたくましく生き延びてきたつもりであったとしても、子ども自身はひどく傷ついてきたのです。
【傷ついた子どもを癒す】
いわゆるアダルトチルドレンと呼ばれる人々は、自分自身の心の中に、まだ傷ついたままの子どもがいます。心の中の子どもは、大人になった今でも、痛みの中に自分の居場所があるのだと思い込んでいます。そのため傷は癒えることはなく、過去と同じような環境から抜け出せないままでいます。まず、心の中の子どもを見つけ、手当てすることから始めましょう。自分を傷つけなくても居場所があること、安心できる場所があることを教えてあげましょう。もしそういった場を自分だけ見つけることば難しいのであれば、カウンセリングなどを利用するとよいでしょう。カウンセリングでは、信頼できるセラピストともに、安全な場で過去の自分と向き合う作業を行います。
【家族以外の居場所、関係性の構築】
生まれて間もない赤ん坊の関係性は、自分とおっぱいしかありません。しかし、成長とともに関係性は広がっていき、やがて生活の場は学校や遊び場、習い事などの家庭外が中心となっていきます。友人、チームメイト、学校の先生、塾の先生、地域の人など、多くの人や場と出会うことになるでしょう。その一つ一つの出会いが、私たちが社会に出ていくための土台となります。大人になってからは、大学や就職先、バイト先などが新しい居場所となります。大学の友人、職場の同僚や上司、恋人などの新しい関係性が生まれます。また、趣味でのつながりも増えるでしょう。このように、家族の中で得られなかった信頼感や居場所を学んだり得たりする機会は、社会の中にたくさんあります。この中で「自分らしく」いられる場所はどこでしょう。傷つきから回復した心の中の子どもとともに、心から楽しめる場所、安心できる場所を探しましょう。「こころの保健室」ではそのお手伝いができれば幸いです。